宝塚観劇の日々

宝塚と観劇の日々

宝塚を中心に観劇の感想などを備忘録的に。。。

ミュージカル『マリー・アントワネット』2021

前回の新演出版初演の公演後に、DVDが発売されたので当分は再演されないのかな?と持っていたのですが、案外早くに再演されましたね。
ということで先日観に行ってきました。

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前回はキャスト違いで観劇したりもしたのですが、今回はお財布の都合で1回限りの観劇となりました。苦笑
とりあえず、前回地方公演に出演してなかった万里生フランツが観たかったのと、上原オルレアンが観たかったのよ。苦笑

マリーはお花さんと玲奈ちゃんのどちらもそれぞれの良さがあったのでどちらでも良かったのですが、昨年のコロナ禍の中でYouTubeにアップされていた『劇場にふたたび音楽が溢れる日まで』の玲奈ちゃんが印象に残っていたので、玲奈マリーを。
そして、ソニンは外せなかったよね~。ソニンマルグリット。

というわけで今回の観劇キャストはこちら

 マリー・アントワネット笹本玲奈
 マルグリット・アルノーソニン
 フェルセン伯爵:田代万里生
 オルレアン公:上原理生
 ルイ16世:原田優一
 レオナール:駒田一
 ローズ・ベルタン:彩吹真央
 ジャック・エベール:上山竜治
 ランバル公爵夫人:彩乃かなみ

前回は、ただただ作品の持つパワーとキャストの熱演、そして素晴らしい楽曲に圧倒されていたのですが、今回は劇場を覆う混沌と憎悪に胸が苦しかった。。。。
昨年から世界中を蔓延する感染症や、あからまさかヘイトが渦巻いていて、
200年、300年前から人間とは全く変わってない愚かな生き物だと突きつけられているようで。。。


玲奈マリーは、凄く可愛くてかわいくて、いわゆる世間一般で想像するようなふわふわしているマリー・アントワネットだったのですが、だからこそか、特に1幕ではまったく現実を見ようとしない、理解しようとしないムダにプライドだけ高く、感情的に動くマリーにイライラしてしまった。

フェルセンが説得している場面でも、彼の言葉は全く響いてなさ過ぎて、説教の一つでもしたくなるくらいでした。

世間知らずで無知で、純粋で。子供っぽい。
でも、まぁ、それが正しいマリーの姿なのかなぁ。
2幕はツライばかりなのですが、それでも1幕のふわふわ浮いているようなマリーと違って2幕ではマリーなりに現実をみて自分なりにできることを精一杯にしている姿に涙。。。。
やはり何度見ても子供を奪われる場面はツラすぎるし、裁判の場面でのやりとりはいろんな意味ですごい好き。

3年前に見た時と比べると、憎悪が前面に押し出されていたように感じたソニンマルグリットに比べ、今回は憎悪の塊ではあるのだけれど、うちに秘めてるというか、いや秘めてないけどただ怒りの感情を表に出しているだけではないように感じて、やはり同じキャスト同じお役でもいろいろ違うんだなぁ~と感じました。
前回よりも抑えているように見えるのに、憎悪の感情とか、マルグリットの背景にある不幸な現実などがより感じられて、前回の公演時にソニンさんはどこかのインタビューで、このお役をやるのは精神的にツライとおっしゃっていたので、今回は前回よりも厳しいのでは・・・?と思いました。
特に、今はこのような状況ですし、終演後に気分転換に外出して出歩くなどもなかなかできないでしょうしね。。。。
あと、前回は私が気づかなかっただけなのかもしれませんが、マルグリットはマリーアントワネットを憎んでいただけではなくて、羨んでいたんですね。そして、ある種フェルセン伯爵にも恋心を抱いていたんだと、私には感じられました。

ホントこの舞台はマリーとマルグリットのふたりがダブル主演ですが、憎しみばかりのふたりの関係が、最後に、本当に最後に和解する場面が少しだけあるとはいえ、カーテンコールで主演のふたりが笑顔で手を取り合っている姿をみるとホント救われる。


歌い声というかそういうものも影響していたのかもしれませんが、上原オルレアンはなんていうかナルシストっぽいというか。自分よりも明らかに能力が低い男が皇帝の座にいることが不満で、「我こそは皇帝にふさわしい」とばかりに暗躍。すべての黒幕はこの人なのではないかと思うのだけれど、やはりどこか憎めないというか時代の波に乗って、のし上がっていこうとするだけの事ですし。そのやり方が良いかは別として。
個人的にはフェロモンむんむんの上原さんを期待(苦笑)していたので、意外とそれが感じられず、ちと残念。

そういえば、カーテンコールで思ったのですが、上原さんとソニンが並ぶと、こちらもフランス革命を民衆側から描いた作品の『1789』ペアだったと気づきました。(いまさら。苦笑)

私ね、ルイが歌う「もしも鍛冶屋なら」大好きなんですよ。
国王でありながら平凡な男でありたいと願いながら歌うあの歌が。
初演ではシュガー(佐藤隆紀)のお歌がもう良すぎて良すぎて。
だから、原田さんの作るルイ16世の良さがあまりわかっていなかったのかも。
純粋で純朴で、そして愚かな国王。
時代が時代なら国民に愛される王だったろうにと思うと残念でならない。
でも、きっとこのルイ16世なら自分を処刑する国民を恨むこともなく、今までもそうだったように愛したまま死んでいたんだろうと思います。

舞台の最後に、『どうやったらこの憎しみの連鎖を止めれるのか。それができるのは我ら』というようなフレーズがあり、3年前に見た時は安易で説教臭いなぁと少々思ったのですが、今このフレーズを聞くと全く違って聞こえてきました。
むしろ、何百年も経ってもまったく過去から学ばず成長しない人類に残念な気持ちになるばかりで。

ホント、今年観劇した別のミュージカルもそうでしたが、世の中をよりよい方向に変えたいと思う人がいる一方で、如何に人類が過去から学ばず利己的であるかを突きつけられているようでした。

民衆は崇高な理想など求めていない。彼らはただ腹を満たし、暖かいベッドで眠りたい。彼らにとっては革命でも皇帝でも音楽でもいいのだ、楽になれたら。

本作とはまったく別の作品なのですが、このセリフがずっと頭の中をぐるぐるしていました。

マルグリットが洗濯女たちを説得する場面とか。
また後世に生きる私たちは当然首飾り事件の真相も、このフランス革命での結末も知っているわけですしね。

 

今も昔も真偽不明のうわさやニュースに惑わされる人はいるし
どうやったら良い世の中になるのでしょうね

人間はおろかな生き物だから、やはりどう頑張っても他人を羨んだり妬んだり、衝突してしまうのでしょうか。



 

 

ミュージカル『マリー・アントワネット
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出:ロバート・ヨハンソン
遠藤周作原作「王妃マリー・アントワネット」より

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