宝塚観劇の日々

宝塚と観劇の日々

宝塚を中心に観劇の感想などを備忘録的に。。。

音楽劇「組曲虐殺」

 先日めずらしくミュージカルでも宝塚でもない舞台を観てきました。一応音楽劇です。

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私は、それこそ子どもの頃はまだ小説を読んでいた時代もあったのですが、成長するにつれてすっかり小説から離れてしまっていて、「蟹工船」も当然のように読んだことがありませんでした。(一応タイトルだけは知っていたけど)
本作はその「蟹工船」の作者小林多喜二氏の物語です。
また、この作品「組曲虐殺」は脚本家井上ひさし氏の最後の戯曲だそうです。
(井上氏の事は存じ上げていないのですが、今年が井上氏の没後10年というメモリアルイヤーでの公演となるそうです)

ときは昭和5年の5月下旬から、昭和8年2月下旬までの、2年9ヶ月。

幼い頃から、貧しい人々が苦しむ姿を見てきた小林多喜二井上芳雄)は、言葉の力で社会を変えようと発起し、プロレタリア文学の旗手となる。だが、そんな多喜二は特高警察に目をつけられ、「蟹工船」をはじめ彼の作品はひどい検閲を受けるだけでなく、治安維持法違反で逮捕されるなど、追い詰められていく。そんな多喜二を心配し、姉の佐藤チマ(高畑淳子)や恋人の田口瀧子(上白石萌音)はことあるごとに、時には変装をしてまで、彼を訪ねていく。瀧子は、活動に没頭する多喜二との関係が進展しないことがもどかしく、また彼の同志で身の回りの世話をしている伊藤ふじ子(神野三鈴)の存在に、複雑な思いを抱いている。言論統制が激化するなか、潜伏先を変えながら執筆を続ける多喜二に対し、刑事の古橋鉄雄(山本龍二)や山本 正(土屋佑壱)は、彼の人柄に共感しながらも職務を全うしようと手を尽くす。命を脅かされる状況の中でも、多喜二の信念は決して揺るがず、彼を取り巻く人たちは、明るく力強く生きていた。
そしてついにその日は訪れる…。

公演前に軽くあらすじを読んでいて、また、数年前に「蟹工船」が再び脚光を浴びているらしいというのはメディアを通じて知っていたので、なんとなく、全編ツラいお話なのかと思っていました。
もちろん、酷い時代を垣間見せる場面もあるのですが、それよりも多喜二を囲む温かい人たちの、ツラい中にもクスリと笑わせてくれる場面を織り交ぜたような作品でした。

音楽劇を見るのは初めてだったのですが、この作品のピアノの効果的なこと。
よくピアノ一つでオーケストラの代わりになるとか言いますが、割と本当だと思う。
時には歌の伴奏となり、時には物語を効果的に見せる効果音となったり。

自分の考えを発表しただけで捕まってしまう時代。 そんな恐ろしい時代が、そんなにも前ではない昔の日本であったとは本当に恐ろしい。 正しいことは正しいと、おかしいことはおかしいと言えなくような雰囲気。 そしてそれが、さほど遠くない過去の日本での出来事だとはとても信じられないというか、実感が湧かなかったです。
もう二度とそのような時代が来てほしくないと、切に思わせてくれる作品でした。


キャストについて少しだけ感想を。

 

小林多喜二(作家):井上芳雄
音楽劇なので対象お歌の場面はあるのですが、その歌の場面以外でも、芳雄さんの演技に圧倒されました。 飄々としていたりコミカルな場面もあるかと思えば、まさに命を削っているかごとくの場面など。 ミュージカルにも、ストプレにも出演されているからこそ表現できるものがあるのかもしれない。

田口瀧子(多喜二の恋人):上白石萌音
方言を使ったセリフ回しがとてもお上手で、また、田舎から出てきた可愛らしい雰囲気づくりなどは素晴らしかったのですが、やはり年齢的に少し(見た目が)若いので、芳雄さんの恋人と許嫁の間ぐらいには見えなかったのがちょっと残念。 演技はとてもよかったんですけどね。

伊藤ふじ子(多喜二の妻):神野三鈴
コミカルな場面(女優を目指していた云々のくだり)と、信念をもって多喜二を支える姿が、対照的な場面ではありますがとてもよかったです。

山本正(特高刑事):土屋佑壱、古橋鉄雄(特高刑事):山本龍二
冒頭で多喜二を取り調べているところと、多喜二が死んでしまってそのあとの最後の場面での変化が、ある意味印象的でした。人との関わり方や、影響の受け方などで、同じような立場の人間が変わっていく様を見ているようでした。

佐藤チマ(多喜二の実姉):高畑淳子
TVドラマなどで見ている際には、特に好きな女優さんなのではなかったのですが、舞台の上では素晴らしかったです。
神野さんとはまた違った力強い演技を見せてもらった気がします。



観劇後、小林多喜二さんの事や戯曲を書かれた井上ひさしさんの事をwikipediaなどで読んで、特に井上さんの人物像に、正直そのDVぶりにドン引きしてしまった。

作られる作品(戯曲)と、その作者とは違うものなのでしょうが、でも、演者やスタッフではない、その作品そのものを生み出した作者だからこそ、なんとも言えない気持ちになってしまいました。。。


wikiをちょっと読んだだけでその作者を理解してるつもりになって非難するんなんて、その情報がどこまで真実かわからないのに。とも思うのですが、やはりちょっと見え方が変わってしまいました。
世の中には知らなくても良い事もありますね。。(苦笑)

 

舞台「組曲虐殺」
作:井上ひさし
演出:栗山民也
音楽・演奏:小曽根 真

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