宝塚観劇の日々

宝塚と観劇の日々

宝塚を中心に観劇の感想などを備忘録的に。。。

ミュージカル「フランケンシュタイン」2幕

死んでしまった親友アンリを蘇らせようとして、まったく別の怪物を作り出してしまったビクターの戸惑い/嘆きで幕を閉じた1幕。
あの夜から3年が経過し、ジュリアの父ステファン市長が行方不明になりそれを探しているビクターの前に現れた怪物。 そして、怪物は語る彼が観てきたおぞましい物語を。

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フランケンシュタインはメインキャストが1幕2幕でそれぞれ別の2役演じていることでも話題となっている作品。

あんなにも弟思いで優しかったエレンは、おぞましい闘技場の女主人エヴァとなって表れるのですが、今回の再演で登板された露崎春女さんは、初演オリジナルキャストの濱田めぐみさんが演じたエヴァよりもゲスみが増していて、
また、エヴァ登場シーンの『欲と血の世界』も迫力が合って良かったしね。 (エレンはめぐさんと比べるといまいちだったけど、エヴァはハマってた)

 

中川ジャックも、柿澤ジャックも、エヴァといるときとか、イゴール(鈴木壮麻)といるときは、可愛らしいんだけど(特にアッキーは可愛い♡)、
対して怪物に対してはとことん酷い。
とはいえ、カッキージャックのほうがゲスいしいろいろ酷い。 アッキーは酷いんだけど、マイルドだよね。

しかし、ビクターと同じ役者が演じているだけに『お前は怪物だ!』の中で、「壊れたおもちゃ」「返品してやる」とかって歌詞にいちいち切ない思いがこみ上げてくる、私。

正直、この2幕の闘技場でのお話は好きじゃないっていうか、これでもかってくらいグロいというか残酷で、出来たらなくなって欲しいというか見たくないような場面なんだけど
でも、この残酷な世界が必要なのもわかるんだよね。この場面がないと、2幕後半のビクターと怪物との対決につながっていかないし。

1幕でもそうだったけど、ホントこの作品は、ほっこりする場面のすぐ後に絶望へ突き落すような、心臓に悪い演出というか展開が強烈。

言葉を少しずつ取り戻していく怪物と、闘技場の下女カトリーヌの『そこには・・・』の後の、『人間のふり』での残酷なエヴァとジャック。
そして、残酷なカトリーヌのナンバー『生きるということは』。
笑いながら泣くカトリーヌの姿がツライ。

あそこまでする必要はあったのか?と思わないでもないですが、でも、あれがあるからこそ、一時は怪物に心を寄せたカトリーヌが怪物に毒を持ってしまうに至る状況に説得力を持たせたというか

初見で見た時は、カトリーヌの境遇に同情しながらも、その裏切りが理解できず混乱したのですが、 今回は『生きるということは』の歌詞の中で明日への希望を歌う姿に心を打たれました。。。

ぶっちゃけ、1幕のジュリアは必要ないかもって感じでしたが、2幕のカトリーヌは必要だし、音月さん自身もカトリーヌのほうが断然良かった。

カトリーヌと出会い、言葉を少しずつ取り戻した加藤怪物は、少しずつアンリの記憶が戻ってきてたように感じました。 怪物加藤は凄まじくて、日によってはこの役柄を1日2回マチソワで演じていると思うと、ホント凄いと思った。

捨てられた怪物のナンバー『俺は怪物』の頃には、怪物の中にアンリの記憶が流れ込んできて、混乱しているというか。
だからこそ、自分をこんな境遇に落とした創造主(=ビクター)への復讐という名の執着が生まれてしまったのかも。

  

怪物の過ごした3年間の話はここまでで、ここで現在に戻るのだけど
怪物はビクターを殺さずに、周りの人間を排除していく。
でも、この頃には、舞台を観ている私は完全に怪物に共感してしまっているし
人間の恐ろしさも見えてしまっていることろで
ダメ押しの街の人たちによるエレンの処刑。。。。

アンリの時のように裁判が行われることもなく、狂気に狂った人たちの犯行。
本当に、どちらが怪物なのかわからないよね。。。。

アンリを蘇らせようとして、不幸な怪物を作り出してしまったというのに、またしても同じ過ちを犯そうとするビクターに突っ込みそうになるんだけど、それは怪物が『絶望』で代弁してくれたから良かった。
というか、このナンバーでのビクターとアンリの掛け合いも最高。

 

初見でも感じたけど、特に2幕は怪物が哀れすぎて、怪物に感情移入せずにはいられない。

怪物と少年の森での物語『』 切ない旋律のメロディの効果もあって、ますます怪物が可哀そう。

 

そして、北極での場面。

初演で見た時は、北極??(たしかに、カトリーヌが怪物に対して北極に行く夢を語ってたけど)どうやって。
などと、無粋なツッコミを心の中でしていたものですが、

今回は再演でストーリー展開は知ってる状態だし、既に数回見てるから、よりこの場面のアンリとビクターをちゃんとそのまま見ることができました。

怪物は、怪物として蘇ったその時から、ずっとビクターのことを「創造主」としてしか呼ばなかったのに ついに最後にビクターの名を呼ぶのですよ。

もう、それだけで、やっぱりアンリは戻ってきてたのかもしれないという感情が出てきて号泣。
ビクター自身もアンリの名前を叫び(益々号泣) そして、幕が下りる。



キャストの力量と熱量に圧倒され、 観ているだけなのに、なんて体力使う作品なんだろうって思う。


 

しかし、2幕後半で言葉を覚えた(記憶を取り戻した?)怪物加藤はカッコよいですよね~~~。
1幕でロングコートを翻すアッキービクターもかっこいいけど。 ホントこの作品は私得でしかないわ。

 

 

今秋には待望のDVDも発売されるので、いまからそれが楽しみで仕方がないですね、 
   

 

ミュージカル『フランケンシュタイン
音楽:イ・ソンジュン
脚本/歌詞:ワン・ヨンボム
潤色/演出:板垣恭一
訳詞:森雪之丞
音楽監督島健
出演:ビクター・フランケンシュタイン/ジャック:中川晃教 柿澤勇人(Wキャスト)
アンリ・デュプレ/怪物:加藤和樹 小西遼生(Wキャスト)
ジュリア/カトリーヌ:音月 桂
ルンゲ/イゴール:鈴木壮麻
ステファン/フェルナンド:相島一之
エレン/エヴァ露崎春女

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