宝塚観劇の日々

宝塚と観劇の日々

宝塚を中心に観劇の感想などを備忘録的に。。。

ミュージカル「フランケンシュタイン」1幕

3年前の初演を見てから、待ちに待っていた待望の再演となるミュージカル「フランケンシュタイン」を観てきました。

前回見た時にその美しいメロディとキャストの熱演に観劇後もしばらくは頭から離れず、私にとってはずっと再演されることを待ち望んでいた公演でした。 

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本作は主人公のビクター・フランケンシュタインとアンリ・デュプレを演じているキャストがダブルキャストでそれ以外のメインキャストも1幕2幕でそれぞれ全く別の2役演じるというとんでもない舞台。

前回は片方のキャストしか観れなかったのですが、今回は中川晃教加藤和樹Ver.と柿澤勇人小西遼生Ver.の両バージョンを見てきました。
そんなわけで年明けから、日生劇場愛知県芸術劇場梅田芸術劇場と廻ってきました~(おかげで金欠が酷い苦笑)

Story
19世紀ヨーロッパ。科学者ビクター・フランケンシュタインが戦場でアンリ・デュプレの命を救ったことで、二人は固い友情で結ばれた。“生命創造”に挑むビクターに感銘を受けたアンリは研究を手伝うが、殺人事件に巻き込まれたビクターを救うため、無実の罪で命を落としてしまう。ビクターはアンリを生き返らせようと、アンリの亡き骸に自らの研究の成果を注ぎ込む。しかし誕生したのは、アンリの記憶を失った“怪物”だった。そして“怪物”は自らのおぞましい姿を恨み、ビクターに復讐を誓うのだった…。

 

この作品の素晴らしい点はその美しい楽曲と、演者の力量だと思います。 ダブルキャストのそれぞれの演技プランというか役の捉え方、表現方法が違っていて、それを楽しめるのもどちらのペアも実力者が揃っていてるので歌唱力などの点ではどちらも安心して見られるからというのも大きいのかも。

 

今回はその中でも私のお気に入りのペア中川加藤回についてのネタバレ含む感想になります。

 

アッキービクターはまさにこれぞ天才!という感じで、天才だからこそある種狂ってるというか。。。
生命の創造という一線をえ越えてしまう研究に没頭するビクターのことが最初は理解できないアンリ。
初演で見た際は、アンリがビクターの考えに反発してたのに、次の場面ではすっかりふたりは打ち解けていて、ビクターの片腕となっているアンリに(展開が早すぎて)ちょっと戸惑ったのですが、
今回の再演で、私自身の理解度が高まったのもあるとは思うのですが、『ただ一つの未来』の歌詞をちゃんと聞いていて、特に後半部分でアンリがビクターに説得されていく姿が見えてきました。

平和な時代が訪れたステファン邸でのアッキービクターの不躾な態度は、もはやコミュ障。苦笑
カッキー(柿澤勇人)ビクターはぶっきらぼうって感じだった気がするんだけどね。
コミュ障なアッキービクターを愛おしく感じてしまう私はヤバい。苦笑

フランケンシュタインは基本的に、ビクターとアンリとの物語なので、それ以外のキャストはさほど重要ではないような気もしないでもないのですが、それでも、特に1幕、2幕ともにビクターを語る上で重要なナンバーを歌っていたエレンのキャスト交代はホントショックだった。。。。
ミュージカル初出演ということを考えると再演キャストの露崎春女さんは頑張っていたと思うのですが、このエレンという役柄としては、というか役柄の解釈や演技プランはおそらく初演の濱田めぐみさんとは違っていて、それはそれで面白かったのですが『孤独な少年の物語』だけは、なんていうか露崎さんの声質も相まって、初演で涙したエレンの、幼くして母を亡くしたビクターに対して母親すら感じさせる母性、包容力が感じられず、ちょっと残念でした。
それでも、最初に日生劇場で見た時よりも地方公演では、だいぶ良くなってきてたから、やっぱり回を重ねるごとにお役に対して深みが増してきてるんでしょうかね。

本作でヒロインジュリアを務められているのは、初演に続いて音月桂さん。
ぶっちゃけ、初演ではビクターの姉のエレンと比べると役柄的にもナンバー的にもそこまで印象に残らなかったのですが、再演ではお歌も(記憶に残っている初演時よりも)ググっと上がっていて。
それでも、やっぱり役柄的にジュリアは印象が薄くなってしまうんですけどね。
というか、他のキャラクターが濃いからね。苦笑
ビクターにとって、ジュリアというか、子どもジュリアとの記憶(思い出)とか、重要になってくるから、そういう意味ではジュリアの存在は必要なんでしょうけどね。
初演でヒロインのジュリアよりも印象深く、重要な役柄だったエレンが、今回の再演では若干薄く、というわけではないのですが、やはり初演オリジナルキャストよりも印象が薄くなってしまった分、ジュリアが目立ったというか。


酒場での場面は、本作では唯一の明るいナンバーなのですが、やっぱり3年も経っていると当然忘れてることもあって、酒場の最初でビクターが街の連中にボコボコにされてるのを見てびっくり。
酔っぱらいとはいえ、そこまでビクターが理不尽なことしたわけじゃないのに、なぜそこまで殴られなければならないの?と戸惑っちゃった。苦笑

しかし、この街の人たちは、基本的に極端だよね。酔っぱらい(ビクター)の戯言にムキになって喧嘩したり、直ぐ呪いとか言い出したりして。まぁ、そういう人間の愚かな姿を(わかりやすく)描いているのも、2幕での怪物のセリフに説得力を持たせるためなのかもしれませんけどね。


1幕2幕を通して、観客のよりどころとなる愛おしい執事のルンゲ(鈴木壮麻)にほっこりさせられるのもこの場面までですしね。ホント、ビクターとルンゲの場面はこのほぼ全編を通して暗い作品の中の唯一のほっこりポイント。


展開が早いこの作品で、一番展開がガラッと変わって、いつもビクッとなってしまうのが、この酒場の場面から法廷への場面転換。
裁判の後でルンゲがエレンとジュリアに状況を説明するナンバーがあるので、なるほど。と後に理解できるのですが、導入部分はいつもこの展開の速さに戸惑う。戸惑うんだけど、畳みかけるように1幕の大ナンバーが続くいていくもんだから、それどころじゃない。

刑務所から処刑場の場面は、アンリの大ナンバー『君の夢の中で』が凄すぎで、でも初演初見ではちゃんと理解できなかったこの場面。でも、今回はビクターの代わりに処刑されることを、笑顔で受け入れていく加藤アンリを見ていて、そしてアンリの歌詞が今回はちゃんと心に入ってきて。

あぁ、アンリはビクターに出会う寸前まで死んだように生きていて(死ぬ場所を探していた?)それが、ビクターのおかげで夢や希望を抱くようになり。それを与えてくれたビクターの為に死ねるのなら本望だと、そう思ったのかな。と。 舞台を見ながら、そうなのかな。。。と思いながらも、やっぱり笑顔のまま処刑台にがってく加藤アンリを見ていると涙を流さずにはいられない。

ビクターは、結局自分の研究のために、切り落とされたアンリの首を研究室に持ってくるんだけど、アンリに会いに刑務所を訪ねる前のナンバー『殺人者』では、研究者としても傲慢なエゴと、親友の命を犠牲にできないという葛藤が、それこそワンフレーズごとに感情が入れ代わっていき

実験室での『偉大な生命の創造が始まる』では、圧倒的天才ぶり、狂人ぶりを見せつつ、それでも、歌詞の導入部分と後半部分では、自身の研究というと意味だけではなく、本当にアンリを蘇らせようとする姿がすさまじい。

ホント、フランケンシュタインはこの1幕後半のビックナンバー2曲を聞くだけでも、価値がある。 親友の為を思って死ぬことを選んだアンリと、そのアンリを生き返らせたいと願ったビクターが、1幕ラストで自らの手で再びアンリ(怪物)を殺そうとする場面がツラくて悲しい。

そして、中川ビクターの劇場中に響くアンリの名呼ぶ歌声

 

 

なんていうものを見せられたんだろう(ストーリー)
なんていうものを見せられたんだろう(中川ビクター、加藤アンリ)

複雑な感情と興奮とが入り混じったまま2幕を迎える

 

 

ミュージカル『フランケンシュタイン
音楽:イ・ソンジュン
脚本/歌詞:ワン・ヨンボム
潤色/演出:板垣恭一
訳詞:森雪之丞
音楽監督島健
出演:ビクター・フランケンシュタイン/ジャック:中川晃教 柿澤勇人(Wキャスト)
アンリ・デュプレ/怪物:加藤和樹 小西遼生(Wキャスト)
ジュリア/カトリーヌ:音月 桂
ルンゲ/イゴール:鈴木壮麻
ステファン/フェルナンド:相島一之
エレン/エヴァ露崎春女

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