宝塚観劇の日々

宝塚と観劇の日々

宝塚を中心に観劇の感想などを備忘録的に。。。

ファントムを観る前に

2幕でエリックがクリスティーヌを庭へ案内する場面。
ここで出てくる詩人 ウィリアム・ブレイク。彼の詩をファントム観劇前に読んでみるとエリックの心がよりわかる気がしました。

  f:id:annakobayashi060:20170508165822j:plain
エリックが自分の心の代弁者とうい詩人が気になって詩を探してみたのですが、これが本当に胸を掴まれるのです。
それが、詩集「無垢と経験の歌/Songs of Innocence and of Experience」の中の1篇「黒人の少年/The Little Black Boy」です。

僕の母さんは南の土地で僕を生んだ
僕は黒い でも心は白いんだ
イギリスの子どもは天使のように白いけれど
僕は黒い 明るさを抜かれたみたいに
 ~ 中略 ~
僕が日陰となって神様の光の熱を和らげ
君が神様の膝にくつろげるようにしてあげる
立ち上がって銀色の髪をなでてもあげる
そして僕らは仲良しの友達になるんだ

まだ奴隷制度が盛んだった時代に詠まれた詩ですが、ここでは肌の色の違いを超えて人間は平等であることが詠われています。
エリックにとっては美醜に違いはあれど、彼も同じ人間なんだと彼自身が信じている(祈っている)のでしょう。

Beauty is only skin deep

見た目の美しさなんて本当に皮一枚なんですけどね。


オペラ座の怪人」や「ファントム」を見るたびに仮面で隠されたエリック(怪人)の顔がそこまで酷いものに思えなくて、仮面を外した姿をみて悲鳴を上げて逃げ出すクリスティーヌが酷いヤツだと思ったものですが、まぁ、それも舞台だからですよね。(舞台メイクでは火傷のような傷がある程度)
原作でエリックの顔は「鼻も唇もなく、落ち窪んだ目、生来の醜悪な人相に壊死した黄色い皮膚で覆われた、見るもおぞましいミイラのような」と描かれていますからね。
奇形をちょっと超えてしまっているような姿なのでしょう。
舞台だから当然キャスト(宝塚の場合トップスターが演じるので)当然お顔は見せないといけないし、そこまで醜くも出来ない。(だいもんの彫刻のようなお顔がより美しく感じる程度 苦笑)
小説だったら、エリックの顔なんかは全て読者の想像にゆだねられるのでしょうけど。
(あっ、海外制作のファントムではエリックの顔は観客には見えないんでしたっけ)


原作は同じですがまったく違う「オペラ座の怪人」と比べて、ファントムに救いがあるように感じられるのは2幕後半が大きく違うからでしょうね。
なんといっても、父であるキャリエールとの親子の愛が凄い。
キャリエールは、自分が過去に犯した罪(ベラドーヴァとエリックへの裏切り)をずっと悔いながら、影ながらエリックを支えてきたのだろうと。でなければ、最後の銀橋での場面が産まれるはずはないと思うのですよ。
そしてそれを感じ取った客席が涙で溢れるはずがないと思うのです。

また、エリックはクリスティーヌに裏切られ絶望するわけですが、最後の死ぬ間際にクリスティーナの腕に抱かれ彼の本当の顔に(母と同じように)キスされるのです。
エリックは普通の幸せは得ることが出来なかったかもしれないけれど、音楽(=愛)に触れることが出来て、最後は幸せそうだと思いました。


なんでしょう。公演を思い出すだけでも胸が熱くなる。
とりあえず、残りの回数を悔いのないよう観て来ようと思いました。

 

 

 三井住友VISAカード ミュージカル『ファントム』
PHANTOM
Book by Arthur Kopit
Music and Lyrics by Maury Yeston
Based on the novel by Gaston Leroux
脚本/アーサー・コピット 作詞・作曲/モーリー・イェストン
潤色・演出/中村 一徳 翻訳/青鹿 宏二
        にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
     にほんブログ村